2022年3月1日火曜日

ジャズ・ミュージシャンの学歴

 

ジャズレコードを初めて手にしたのは、1959年かそれ以降のことである。輸入盤は当時の価格で¥2,500-くらいでとても我々が買えるものではなかった。京都では新京極を四条通から入った映画館の側壁の出店、東京都(ひがし京都)でも現在の新宿アルタ界隈のバラックのような木造平屋の一番奥ではなかったかと思う。正規の輸入品ではなくて米軍PXの横流し?かアメリカ人が売ったものかわからない代物で、封もされてなかったので時々ジャケットの中から出るアメリカの香り?を楽しみに行った。

我々が買えたのは日本版のバーゲン品。¥500〜¥800くらいだったかなと思う。¥1,000では当時の高校生では裕福な坊ちゃんでないと買えなかった。ただ、ジャケットカバーがアメリカ版のコピーで英語を教科書以外ではじめて興味深く読もうとした。

そこで驚いたのは、若手のミュージシャンの多くがボストンのバークリー音楽大学かニューヨークのジュリアード音楽大学を卒業していたことである。私のアイドルT.Monkは1927年生まれ、高等学校も卒業したかどうかわからないようで、その頃のベテラン?モダンジャズ・バップの創生期に貢献したミュージシャン達は似たりよったりで、専門学校・教室で学んだ人達が主であったようだ。まだまだ差別の強い社会だったので若手の親は無理をして大学へ入学させたのかと思われる。M.デビスは歯医者の父を持つ裕福な家庭であったためかジュリアードに入学したが、学ぶべきもがないといううことで卒業はしていないらしい。彼はニューヨークに出たいために、父親からジュリアードの学費を出してもらった上に仕送りもしてもらっていたようで、そのへんが苦労人のT.Mと反りが合わなかったてんかなと思っている。子供扱いされたM.Dが兄貴分のT.Mにさからっていたのか?

そのころの我が国のポップ・ミュージック、ジャズは不良がやるもので、大学を卒業したミュージシャンは殆どいなかった時代である。ナイトクラブやキャバレーのバンドには大学生のアルバイトはいたが、卒業してからも続ける人は少なかった。大学の軽音楽部が盛んではあったが、卒業後までもは?高校もドロップアウトしたりの中卒ミューシャンも多くいたかと思う。私の世代でも、若いときから クラブで働いていた人から、怖いお兄さん達がやってきて刀を振り回して暴れた、という話を聞いたことがあります。

それでもジャズをやっている人はポップ音楽を牽引しているという自負があって、一般のポップ、ロックや流行歌を見下していた感があります。まあ、食べるためには歌謡曲もやらざるをえないといった感じでした。コカコーラがスポンサーだった「大学対抗バンド合戦」では、西の司会者が森のフクロウ、東が大橋巨泉氏で決勝は毎年東で行われていたが、その番組の主な出演者・審査員・批評家の殆どがジャズの出身者。たまにロックでもやろうものなら、みんながよってたかって「大学生にもなって下らんことをやるな」と こきおろしたものでした。後に11PMの司会をやった小島正雄氏は早稲田大学の出身者で、ジャズに関わった人としては特別。大橋巨泉氏も慶応大学出身のジャズ解説・批評家だったのですがジョンコルトレーンが現れてジャズがわからなくなって遊び人の特技を生かしたタレントになったとか。

それでも当時はいろいろな音楽が 楽しまれていて、大学の軽音楽部にはタンゴ、ウエスタン、ハワイアン、ラテンなどのバンドがありました。タンゴやシャンソン、フラメンコなども夜の繁華街で生まれた結構下品な音楽ではあったのですが、受け入れられてはいたしテレビでも放送されていた。

現在ではアメリカの地方大学でもジャズのコースを持つところがあって、ニューヨークで学んでいないミュージシャンも多いようですし、日本でもジャズを学べる大学が幾つかあるようですがバークリーのようなポップ音楽専門の大学はありません。ちょっと前の話ですが、そのバークリーを出て質の高いロックミュージシャンになる人もいて、キャンパスにはモヒカンやパンクファッションの学生達がいるそうです。日本でも音楽大学を出てポップ音楽を志す人は多くなっていると思いますが、ジャズ関係者にこけにされたグループサウンズ時代の若者達のオリジナルが現在日本のポップ音楽をリードしていると思う。ジャスが盛んだった頃は、アメリカのコピーがもてはやされていたのです。 

M.Dがフュージョン音楽を創り出した頃からジャズはアメリカでも下火になっているようです。が、どんな形になってもブルースの心がない黒人音楽は私にはなじまない。社会が豊かになったので忘れられるつつあるように言う人がいるようですが、M.Dのフージョンにはブルースの心があったと思う。大学で音楽を学んでも、底に流れる心を忘れては音楽ではなくなる。それはフラメンコも、シャンソンも、タンゴもクラシックも同様に思う。

0 件のコメント:

T.Monk を知る